日本剣道形(太刀の形)

一本目
打太刀が上段から仕太刀の正面を打ち、仕太刀はその面を大きく抜き打太刀の正面を打つ、という抜き技の形である。
打太刀は諸手左上段、仕太刀は諸手右上段で、打太刀は左足、仕太刀は右足から、互いに進み、間合いに接しとき、打太刀は機を見て右足から踏み出し、仕太刀の正面を打つ。
仕太刀は左足から体を少し後ろに自然体でひくと同時に、諸手も後ろにひいて、打太刀の剣先を抜き、右足を踏み出し、打太刀の正面を打つ。
打太刀が剣先を下段のまま送り足で一歩ひくので、仕太刀は、十分な気位で打太刀を圧しながら、剣先を顔の中心につけ、打太刀がさらに一歩ひくと同時に、左足を踏み出しながら、諸手左上段に振りかぶり残心を示す。
打太刀が剣先を下段から中段につけ始めるので、仕太刀も同時に左足をひいて諸手左上段を下ろし、相中段となり、剣先を下げて元の位置にかえる。

二本目
相中段から互いに先の気位で進み、仕太刀が先々の先で勝つ技である。

打太刀、仕太刀相中段で、お互いに右足から進み、間合いに接したとき、打太刀は機を見て
仕太刀の右小手を打つ。
打ち方は大技で打つが振りかぶったときに剣先が下がらないようにし、仕太刀の右小手の
位置より、わずかに低く打つが、斜め打ちにならないよう一拍子で打つことを心がける。

仕太刀は、左足から右足をともなって左斜め後にひくと同時に、剣先を下げて、打太刀の
刃の下で半円をえがく心持で打太刀の打ち込んでくるのを抜いて、大きく右足を踏み出すと
同時に打太刀の右小手を打つ。
このとき剣先を下げる高さは構えを解いたときと同じ程度とし、振りかぶる程度は両腕の間から見える程度とする。
右足を踏み出して打つときの注意は左足も引き付けることを忘れないようにする。

打太刀は左足から、仕太刀は右足から十分な気位で残心を示しながら、相中段になりつつ、
刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて、元の位置にかえる。
このときの残心は形には表さない残心なので、特に十分な気位が大切である。

三本目
相下段から中心の取り合いの中で突きの応酬で勝ちを収める技である。

  打太刀、仕太刀相下段で、互いに右足から三歩進み、間合に接したとき、互いに気争いで
自然に相中段になる。
そこで打太刀は機を見て、刃先を少し仕太刀の左に向け、右足から一歩踏み込みながら、鎬ですり込み、諸手で仕太刀の水月を突く。
  仕太刀は、左足から一歩大きく体をひきながら、打太刀の刃身を物打で軽く入れ突きに萎やすと同時に打太刀の胸部へ突き返す。
 打太刀はこのとき右足を後ろにひくと同時に、剣先を仕太刀の刃の下から返して、諸手をやや伸ばし、左自然体の構えとなり、剣先は仕太刀の咽喉部につけて仕太刀の刃を
物打の鎬で右で押さえる。
 仕太刀は、さらに突きの気勢で左足を踏み出し、位詰に進むので、打太刀は左足をひくと同時に、剣先を仕太刀の刃の下からまわして返し右自然体の構えになり、物打の鎬で
押さえるが仕太刀の気位に押されて剣先を下げながら左足(後ろ足)から後へ三歩ひく。
  仕太刀は、すかさず右足から三歩小足にやや早く位詰に進みむ、剣先は胸部から
次第に上げていき顔の中心につける。
  その後、打太刀が剣先を上げ始めるので、仕太刀は左足から五歩後退する。
  打太刀は仕太刀の後退2歩目位に剣をあわせ相中段になり三歩前進し抜き合わせた
位置にもどり、剣先を下げて、元の位置にかえる。

※仕太刀が剣先を顔につけての残心は剣の延長線が左右の目の中心である。 

四本目
陰陽の構えから互いに進み、仕太刀が後の先で勝つ技である。

打太刀は八相の構え、仕太刀は脇構えで、互いに左足から進み間合いに接したとき、
打太刀は機を見て八相の構えから、諸手左上段に、仕太刀もすかさず脇構えから、諸手
左上段に変化し、互いに右足を踏み出すと同時に、十分な気勢で相手の正面に打ち込み、
切結んで相打ちとなる。
ここでの注意点は諸手左上段に振りかぶる程度は、両腕の間から相手の体が見えるくらいで
相手の正面に打ち込むときは、諸手を十分に伸ばすことが大切である。
四本目は大技を示したものであるから、大きく伸びるようにするのがよい。だから間合い
のとりかたには、特に注意しなければならない。

相打ちとなってからは、双方同じ気位で互いの刀身が鎬を削るようにして、自然に相中段と
なり、打太刀は機を見て刃先を少し仕太刀の左に向け、右足を(左足をともなって) 進めると
同時に、諸手で仕太刀の右肺を突く。
ここでの注意点は、相打ちになった後、間合いが近すぎる場合は、打太刀が左足をひいて
間合いを取る。

仕太刀は、左足を左前に、右足をその後ろに移すと同時に大きく巻き返して打太刀の
正面を打つ。
大きく巻き返す要領は、左拳を頭上に上げると同時に刃先を後ろにして巻き返す。

打太刀は左足から、仕太刀は右足から、十分に残心の気位を示しながら相中段になりつつ、
抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて元の位置にかえる。
ここでの残心は二本目と同じに形に表さないので、十分な気位が大切である。

五本目
上段から正面を打ち、仕太刀がその刀をすり上げて正面を打つ技である。

打太刀は諸手左上段、仕太刀は中段で、打太刀は左足から仕太刀は右足から、お互いに進み、間合いに接したとき、打太刀は機を見て右足を踏み出すと同時に諸手左上段から、
仕太刀の正面を打つ。
ここでの注意点は、仕太刀は打太刀の上段に構えたに対し、剣先を左拳につけ刃先は下を
向くように構え。 打太刀の正面への打ちは顎まで切り下ろす心持で行う。

仕太刀は、左足からひくと同時に左鎬で打太刀の刃をすり上げ、右足を踏み出して正面を打ち、右足をひきながら諸手左上段に振りかぶって残心を示す。
すり上げは両腕の間から相手の体が見える程度に行う。なお、払い面にならないように注意
する。すり上げられた打太刀の刀は死に太刀となり、構えを解いた程度まで落ちる。
残心は打太刀の顔の中心を通りながら上段にとる。

仕太刀が剣先を中段につけ始めるので、同時に打太刀も左足をひいて剣先を中段に下ろし、相中段になる。
打太刀は左足から、仕太刀は右足から小足三歩で、刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて元の位置にかえる。

六本目
打太刀は中段、仕太刀は下段で、互いに右足から進み、間合いに接したとき、仕太刀は機を見て
下段から打太刀の両拳の中心を攻める気勢で、中段に上げ始めるので、同時に打太刀も、これに
応ずる心持ちでやや剣先を下げて、仕太刀の刀と合おうとする瞬間、右足をひいて諸手左上段に
振りかぶる。
仕太刀はすかさず中段のまま大きく右足から(左足もともなって) 一歩進む。打太刀は直ちに左足を
ひいて中段となり、機を見て仕太刀の右小手を小技で打つ。
仕太刀はその刀を、左足をひらくと同時に、小さく半円を描く心持ちで、右鎬ですり上げ、右足を
踏み出し、打太刀の右小手を打つ。打太刀は剣先を下げて、左足から左斜め後ろに大きくひくので、
仕太刀は左足を踏み出しながら、諸手左上段に振りかぶり残心を示す。
打太刀、仕太刀ともに右足から相中段になりながら、刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて
元の位置にかえる。

七本目
打太刀が突きを出す、しかし不十分で正面を打つ、そこで仕太刀が胴を打つ技である。
打太刀、仕太刀相中段で、互いに右足から進み、間合いに接したとき、打太刀は機を見て、一歩軽く踏み込み、刃先をやや仕太刀の左斜め下に向けて、鎬ですり込みながら、諸手で仕太刀の胸部を突く。
仕太刀は、打太刀の進む程度に応じて、左足から体をひくと同時に、諸手を伸ばし、刃先を左斜め下に向け、物打の鎬で打太刀の刀を支える。
お互いに相中段になり、打太刀は左足を踏み出し、右足を踏み出すと同時に、体を捨てて諸手で仕太刀の正面に打ち込む。
仕太刀は、右足を右前にひらき、左足を踏み出して体をすれ違いながら諸手で、打太刀の右胴を打ち、右足を踏み出し左足の右斜め前に軽く右膝をついて、爪先を立て左膝を立てる。
諸手は十分に伸ばし、刀は手とほぼ平行に右斜め前に取とり、刃先は右に向ける。
その後、刀を返して脇構えに構えて、残心を示す。
打太刀は、上体を起こして、刀を大きく振りかぶりながら、右足を軸にして、左足を後ろにひいて、仕太刀に向き合って、剣先を中段につけ始めるので、同時に仕太刀も、その体勢から刀を大きく振りかぶりながら、右膝を軸にして左に向きを変えて、打太刀に向き合い、
剣先を中段の程度につける。
つづいて仕太刀が十分な気勢で立ち上がってくるので、打太刀は左足から後ろにひきながら、
相中段になり、さらにお互いに縁が切れないようにして打太刀、仕太刀ともに左足から、
刀を抜き合わせた位置にもどる。

小太刀  1本目
  打太刀は諸手左上段、仕太刀は中段半身の構えで、剣先の高さを打太刀の顔につけ、
打太刀は左足から、仕太刀は右足から、互いに進み間合に接したとき、仕太刀が入身に
なろうとするので、打太刀は右足を踏み出すと同時に、諸手左上段から、仕太刀の正面に
打ち下ろす。
 仕太刀は、右足を右斜め前に、左足をその後ろに進めて、体を右にひらくと同時に、右手を頭上に上げ、刃先を後ろにし、左鎬で受け流して打太刀の正面を打ち、左足から一歩引き、上段に取り残心を示す。
 その後、いったんその場で相中段になってから、打太刀、仕太刀ともに、左足から刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて元の位置にかえる。


小太刀  二本目
 打太刀は下段、仕太刀は中段半身の構えで剣先の高さを打太刀の胸部にとる。
互いに右足から進み間合に接したとき、打太刀は、守る意味で下段から中段になろうと
する瞬間、仕太刀は、打太刀の刀を制して入身になろうとするので、打太刀は、右足を
後ろにひいて脇構えにひらくのを、すかさず、仕太刀が、再び中段で入身になって攻めて
くるので、打太刀は脇構えから変化して諸手左上段に振りかぶり、右足を踏み出すと
同時に仕太刀の正面に打ち込む。
 仕太刀は左足を左斜め前に、右足をその後ろに進めて、体を左にひらくと同時に、
右手を頭上に上げ、刃先を後ろにし、右鎬で受け流して面を打ち、打太刀の二の腕を
押えて腕の自由を制すると同時に、右拳を右腰にとり、刃先を右斜め下に向け、
剣先を咽喉部につけて残心を示す。
 その後、打太刀は左足から、仕太刀は右足から相中段になりながら刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて元の位置にかえる。


小太刀  三本目
 打太刀は中段、仕太刀は下段半身の構えで、打太刀は立会の間合から、右足、左足と進み、次の右足を踏み出すとき、仕太刀が入身になろうとするのを中段から諸手右上段に振りかぶって、仕太刀の正面に打ち下ろす。仕太刀は、その刀をいったんすり上げて打太刀の右斜めにすり落とす。
 打太刀は、直ちに左足を踏み出し、仕太刀の右胴を打つ。仕太刀は左足を左斜め前に踏み出し、体を右斜めにひらくと同時に、胴に打ってくる打太刀の刀を、左鎬ですり流し、そのまま左鎬で、打太刀の鍔元にすり込み、小太刀の刃部のはばきで打太刀の鍔元を押さえて、入身になり、打太刀の二の腕を押さえる。
 打太刀がひくので、仕太刀はそのまま攻めて、三歩進み右拳を右腰にとり、刃先を右斜め下に向けて、剣先を咽喉部につけ、残心を示す。そのあと、打太刀は右足から仕太刀は左足から相中段になりながら刀を納めて立会の間合にかえり、立礼をして終わる。