打ち返し(切り返し)


打ち返し(切り返し)の目的
打ち返しは、正面打ちと連続左右面打ちを組み合わせた剣道の基本的動作の総合的な稽古です。初心者も熟練者も必ず行うことが大切である。
打ち返しの稽古を行うことで次のような効果があらわれる。

身体の動作が軽妙になり敏捷性を養うことが出来る。

身体、手足の力量が増大し筋力の増強に役立つ。

自然に呼吸法が身に付き持久力などを養うことが出来る。

気力が旺盛になり気剣体一致の打突が可能になる。

悪い癖を虚勢することが出来る。

手の内が良くなり打ち方が上達する。特に左の返しが上手になる。

常に正確な打突部位をとらえることにより相手との間合いが見えてくる。

稽古の前後に行うことにより準備、整理運動になる。
このような効果があらわれるが、稽古の実施においては全身の気力を込めて行い初心者の場合ゆっくり大きく正確に行い段々と早くすることが大切である。


打ち返し(切り返し)の動作
中段の構えから送り足で一足一刀の間合いに進み、大きく振りかぶり右足を踏み込むと同時に正面を打ち、前進しながら4本、(左面、右面、左面、右面) 後退しながら5本(左面、右面、左面、右面、左面) 打ち、さらに後退し間合いを取る。これを1回とし2回繰り返す。最後に正面を打ち相手の向う側に抜け、振り向いて残心をしっかりとる。
動作の中で大切なことは

 姿勢、構え、竹刀の握り方など注意しながら行う。

初心者の場合特に動作を大きく正確に行い速いことをのぞまずゆっくりと確実に行う。

肩の力を抜いて左右均等な打ちになるようにし角度は45度くらいになるようにおこなう。

常に正しい足さばき(送り足)に注意し特に後退のとき歩み足にならないようにする。

振りかぶった左こぶしは必ず頭上とし打ちおろした左こぶしはみずおちとすること。

 左こぶしは常に正中線上を移動する打ち方を心がけること。

息のつなぎ方は、息を吸って正面を打った後、息を吸って左右面を打ち最後の正面を打った後、息をつないで残心をとる。
しかし小学生など肺活量の少ない者は左右面の途中1回、最後の正面打ちの前に息をつないで常に大きな声が出るようにしたほうがよい場合もある。
熟練するにしたがって、旺盛な気迫を持って息の続く限り一息で、体勢を崩すことなく連続左右面を打つようにすることが大切である。

竹刀の打突部で正確に打突部位 (竹刀ではなく相手の左右面) を正しくとらえること。

特に正面への打突は一足一刀の間合いから正確に打つことを心がけること。

打ち返しは稽古の前後に行うように習慣付けること。


打ち返し(切り返し)の受け方
中段の構えから、剣先を右にわずかに開き正面を打たせる。ただちに連続左右面を歩み足で後退、前進しながら打たせ、打ち終わったら双方が中段の構えになるように間合いを充分にとって、ただちに剣先を開いて次の正面を打たせる。
動作の中で大切なこと

相手が初心者の場合
竹刀を垂直に立て、左こぶしを体の中心から左、(右)に寄せ相手の左右面打ちを
引き込むようにして受ける。
相手の技量が上達者の場合
左こぶしを中心からはずさず、相手の左右面打ちを迎えて打ち落とすようにして受ける。

左右面打ちは 歩み足 で受けること。

左右面打ちを受ける場合左のこぶしは腰の高さ、右のこぶしはほぼ乳の高さにし、
両こぶしが上がり過ぎないようにすること。

気を入れて合気となり、大きな掛け声を掛けて相手を引き立てるようにすること。

最後の正面打ちを特に正確に打たせるようにすること。

習熟の程度に応じて 「引き込む受け方」「打ち落とす受け方」 を適宜用いて習熟の効果の向上を目指す。

正面を打たせた後の残心を正しく取るようにすること。